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ED |
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EDとは?
英語のErectile Dysfunction(勃起不全)の頭文字をとったものです。国際的な定義は、“性交時に十分な勃起が得られない、または十分な勃起が維持できないために、満足な性交が行えない状態”とされています。
以前はインポテンスと呼ばれていましたが、侮蔑的な表現であることと病気の性質を表していないことから、EDという言葉が国際的に使われるようになりました。
EDの患者数
日本での調査では、40代で6人に1人、50、60代で約半数、日本全体では1000万人以上と推測されているように、非常に患者数の多い病気です。
EDのおこるしくみ
勃起が起こるためには、心理的な興奮が正常に起こることとペニスを支配する神経と血管(海綿体も含む)が正常であることが前提となります。従って、心理的な要因であるストレス、不安、うつ病などによって発生しますし、神経の障害をもたらす脊髄損傷や神経の病気(多発性硬化症など)や骨盤内の臓器(膀胱、前立腺、直腸)の手術や放射線治療、糖尿病などによっても発生しますし、血管の障害をもたらす高血圧や糖尿病、心臓病の方にも発生します。また、精神科の薬や高血圧の薬などの副作用によっても起こることがあります。
朝立ちがないのですが、EDになりかけているのでしょうか?
いわゆる朝立ちは、起床した時に勃起している状態を指しますが、これは夜間勃起現象と呼ばれる生理的な睡眠中の勃起現象が持続している状態を指します。この夜間勃起現象はレム睡眠と呼ばれる睡眠の時期(この時期に夢を見る)に一致して起こっています。健康な男性であれば(子供でも)性的な興奮とは無関係に起こっています。ですから、レム睡眠でない時期に目が覚めれば朝立ちは起こらないのです。したがって、朝立ちがないからと言って、すぐEDになりかけているとは言えません。
なお、この夜間勃起現象は、眠っている間にも海綿体に酸素の多く含まれる動脈血を定期的に送りこみ、海綿体をより良い状態に保つための生理現象と考えられています。
EDの予防
EDの危険因子がわかっています。興味深いことにそのすべてが心筋梗塞や狭心症といった心臓の病気の危険因子と共通しています。EDが心臓の病気の前触れではないかという考えもあるくらいです。危険因子を列挙しますと、加齢、肥満/運動不足、喫煙、糖尿病、心血管の病気/高血圧、慢性腎臓病、神経の病気。手術/外傷、うつなど精神的因子、薬物、睡眠時無呼吸症候群などあります。これらのうち、加齢は避けようがないのですが、喫煙は止めることができます。精神的要因や薬物、睡眠時無呼吸症候群など、治療により改善が望める要因もあります。肥満や運動不足の方は、適度な運動を定期的にすることによってある程度改善することが望めます。実際、運動することで肥満が解消され、勃起機能が改善したという報告が外国でなされています。
EDの診断
まず初めに問診表(図)に記入していただきます。点数が21点以下であればEDの疑いがあります。後は、詳しい問診と、血管と神経に重点をおいた全身的な診察が必要です。必要な場合には採血もいたします。夜間の勃起の有無を計測する装置や、ペニスの血流を計ったりするような特殊な検査は一部の専門的な施設でのみ行っています。
EDの治療
先ず、上で述べたような危険因子で排除可能なものがあれば排除します(例:禁煙など)。また病気が原因の場合は、治療により改善することがあります。睡眠中に何度も呼吸が止まったり,浅くなったりして体の低酸素状態が発生する睡眠時無呼吸症候群の場合は、睡眠中の呼吸を補助する機械を装着することで、EDが改善することがあります。心理的要因についてはカウンセリングが有効なこともあります。うつ病など精神疾患が原因として疑われたときは、治療のため精神科や心療内科を紹介することがあります。また薬が原因のこともありますが、薬との関連性を感じられたときは自己判断で中断せず、必ずかかりつけの先生にご相談ください。
その後に、薬物療法を考慮します。
いわゆる精力剤で有効性の証明されたものは皆無なので、高いお金をつぎ込むだけ損です。
現在、日本で処方可能なお薬で有効性が証明されているのは以下の3剤だけです。
注:薬物療法も含めて、すべての治療について保険が適応されていませんので、すべて自費となります。
バイアグラ、レビトラ、シアリス
3剤ともホスホジエステラーゼ5阻害剤に分類されるお薬です。その作用は、勃起を起こす物質である一酸化窒素が細胞内でサイクリックGMPという物質を作ります。そのサイクリックGMPの働きでスポンジ状の海綿体の筋肉が弛緩し血液が充満し、勃起が起こるのですが、このサイクリックGMPを分解するホスホジエステラーゼ5阻害剤の作用を邪魔するのです。それによって勃起を助けます。
【バイアグラ、レビトラ、シアリスの効果】
大まかに言って、7割の患者さんに効果があります。ただし、重症の糖尿病や前立腺がんの手術後の患者さんに関しては5割程度しか効果がありません。
【バイアグラ、レビトラ、シアリスの副作用】
多いのは、頭痛、顔のほてり、胸焼け、などですが、どれも一時的で軽いものです。
【ニトロとの相性が悪いと聞きましたが?】
硝酸剤と呼ばれる一連の薬剤(飲み薬、貼付剤、舌下錠、注射)とこの種類の薬が体内で同時に存在すると、血圧が危険なレベルにまで下がりますので併用禁忌(決して併用してはいけない)になっています。実際に併用して死亡した例があります。アメリカのコメディ映画「恋愛適齢期」(ワーナーホームビデオ)に関連した場面がありますので、一度この映画をご覧になればよく理解していただけると思います。
【心臓によくないと聞きましたが?】
それは大きな誤解です。上で述べたように硝酸剤との併用は禁忌ですが、この薬剤自体は心臓を栄養する冠動脈にいい影響を与えます。誤解を招いたのは、性行為自体がある程度負荷のある運動(ペンキ塗りやゴルフくらいの負荷)であるということからだと思います。アメリカの医師はよく階段を2階分(例えば1階から3階まで)歩いて昇って、胸が苦しくなるなどの症状が出なければ、性行為はしてよいと説明します。前記の映画でも、そういう場面が出てきます。アメリカでは心筋梗塞が日本の5倍くらいあるので、この話題は大きな問題です。そこで心臓の専門家や泌尿器科の医師などが集まって公式の文書を出しました。プリンストン・コンセンサス・パネルの勧告といわれるものです。これにしたがって検査し、性行為をしてよいか、薬を処方してよいか判断できるようになっています。
【NAIONという副作用がアメリカで問題になっていると聞きましたが?】
これは非動脈炎性前部虚血性視神経症の頭文字をとったものです。前触れもなく突然、視力が低下したり、最悪の場合には失明する病気で、原因は不明で予防法も治療法もありません。発症したときはただちにED薬を中止して眼科を受診してください。2005年頃からED薬の副作用として報告されはじめました。ホスホジエステラーゼ5阻害剤を服用してこの病気を発症した人の多くは、45歳以上で、糖尿病や高血圧のある人であったとされています。日本では疫学調査が行われていませんので発症率は不明ですが、ED薬の内服中に発症したという明確な報告はありません(2022年7月29日現在)。
【偽造ホスホジエステラーゼ5阻害剤について】
近年では、医療機関を受診せずにインターネットにて購入する方も増えていますが、2008年8月から2009年4月にかけて、日本でインターネットを通じて購入したホスホジエステラーゼ5阻害剤の43%が偽物だったとの報告もあります。含有する成分により重篤な副作用が生じた例が報告されています。また、一緒に飲むことで危険性が高まる薬や病気を悪化させる可能性もあります。インターネット経由では購入せず、ちゃんと医療機関を受診してホスホジエステラーゼ5阻害剤を購入しましょう。
薬の効果がなかった場合はどうすればいいのですか? 1
まず、1回だけでは効果がないと判定できません。緊張すると薬の効果がでにくいからです。数回試しても効果がない場合、きちんと性行為の1時間くらい前に服用しているか、バイアグラの場合は空腹時に服用しているか、性的な刺激をきちんと加えているかをチェックします。もし、そのどれもきちんと行っていても効果がないのなら、薬が無効と判定せざるを得ません。その場合、日本を除く外国では許可されている量(バイアグラなら100mg、レビトラなら20mg)まで増やすかは担当医との相談になります。量を増やしてもダメなら、次のステップに行かざるを得ません。
薬の効果がなかった場合はどうすればいいのですか? 2
1 陰圧式勃起補助具
現在、厚生労働省の認可を受けているのは、VCD式カンキ(承認番号: 21200BZZ00652000)で、インターネットで購入できます。この器具の原理は陰圧により、陰茎内に血液を集めて、疑似勃起状態を起こし、その後ペニスの根元をゴムバンドで縛るものです。不利点として、陰茎が冷たいのでパートナーに違和感があり、はじめは準備に時間もかかります。パートナーと十分相談して購入されることを勧めます。血液が固まりにくくするような薬を飲まれている方には禁忌です。
2 陰茎海綿体注射
ペニスに直接、血管を開く物質(プロスタグランディンE1)を注射する方法です。有効率は8割以上と高いのですが、注射できる専門施設が少ないのが欠点です。稀に起こる持続勃起症(性的興奮を伴わない、痛みのある勃起状態が4時間以上持続する。緊急に血管を収縮させる注射で治療する必要がある)に対応できる体制がある専門施設で行われる特殊な方法です。
3 陰茎プロステーシス手術
最後の手段です。海綿体の部分にシリコン製の棒を埋め込むもので、確実に性交が可能となります。器具自体と手術費が高価なこと、感染のリスクがあることが欠点です。この手術に慣れている専門施設で受けることをお勧めします。 |
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2024年9月更新 |
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